日本大学理工学部科学技術史料センター
武部健一

武部健一


人物年譜
 

武部健一 文庫

 2008(平成20)年秋に寄贈された文庫である。京都大学土木工学科を1948(昭和23)年に卒業された武部健一氏は、特別調達庁、旧建設省関東地方建設局を経て、日本道路公団に入社。以後、同東名高速道路計画課長、東京建設局長、常任参与など、主に黎明期から発展期の高速道路に携わってきた道路技術者である。日本大学の土木工学科や交通工学科(現交通システム工学科)を卒業して日本道路公団に就職したOBで、武部氏のお世話にならない者はいないといわれるほど、本学の卒業生と武部氏との関わりは深い。私も学生のころ、氏の著書である『インターチェンジ』を読んで、インターチェンジを設計してみたいと夢をかきたてられた者のひとりである。当初の史料点数は1020、雑誌類はタイトルでひとつと数えていたことや、その後に寄贈された史料もあるので、実際の史料点数はもっと多い。
 武部文庫の特徴は、氏自身が書かれた貴重な文章が残されているので、それを以下に引用したい。(武部氏は、2015(平成27)年5月29日に逝去された。享年89歳)

――まず、私の所蔵資料の基本的性格が2点あります。第一は道路を歴史的・文化的存在として認識する研究者としての蔵書です。この場合、このような研究がどのような広がりを持っているのかが分るという意味で、その全体像が意味を持っており、そこから特定の資料だけが抜き取られる、というのでは余り意味がなくなると思います。なお、この観点からの一次史料としては、私の古代道路史研究の基本である全国七道駅路路線図(20万分の1及び5万分の1図:資料№956~993)は、これまでだれもアプローチし、整理したことのないものです。私の師である木下良先生もほぼ同様な資料を作成されていますが、私のように折り畳み図としてきちんと整理されたものではありません(木下先生個人蔵)。そのほかにも、一般書店で販売されていない私家版の資料(一里塚、道標など)には、私が集めるというより集まってきた貴重な資料も幾つか含まれています。なお、中国の道路史関係書をほぼ揃えているのは私以外に日本にはいないと思います。
 第二は道路の計画と建設に携わってきた一技術者としての蔵書です。これも全体を見て頂く事に一つの意味があると思います。そこに、どれだけ一次史料的な素材があるかが、大学の立場からはご興味のあるところだと思います。残念ながら、その点ではその種史料は決して多くはありません。それは、本来すべて公的な資料であり、私で言えば建設省、日本道路公団の公的資料であって、原則的には持っていないことになります。ただ幸いなことに幾つかは残されています。例えば、「東海道幹線自動車国道 静岡・豊川間 調査報告書」(資料№700)は、高速道路の路線検討としてはよくまとまった貴重な資料だと思います。また「Vorlaufige Ausbaugrundsatze für Autobahnknoten」(資料No.429)は、戦後間もないころのドイツのアウトバーン・インターチェンジの設計指針です。
 烏山の住民反対運動関係では手元に目録だけしかなかったのでリストに載せていませんが「中央道(高井戸~調布)に関する報道等記録集」昭和51年5月、日本道路公団東京第二建設局、が限定ナンバーつきで出されております。これは中央道の環境問題の新聞報道記事、雑誌記事、地方自治体の広報、住民団体の発行するニュースなどを集めて一冊にしたものです。その実物を保管している水間雅昭氏(日大交通工学科42年卒)は、今回の私の蔵書の一部として寄贈することを承諾してくれております。このほか、関係者(私と職場を同じくしていた者で、主として日大卒業生)数名に呼びかけて、その種資料の提供をお願いしているところです。ただ、申し上げたように、公的資料を持っていることは非常に少ないのが実情です。
 先ほど言い忘れましたが、リストの地図・絵図類のNo.1001~1014の高速道路路線図は、その時代の道路地図としてかなり一次資料的なものと考えられます。そうした地図類は、ここには挙げておりませんが、ほかにもかなりあります。――

 武部氏は、寄贈に際し、ご自分が考えられた道路史分類にもとづいて整理され、各書籍名は論文の参考文献リストのようにつくられていた。できればそれが本棚に並べられるときの順序であることも希望されていた。しかしCST MUSEUMではほかの文庫との関係もあるので、分類番号はCST MUSEUM方式で整理するが、武部氏の分類との関係性はわかるように整理するということで受け入れている。ちなみに武部氏が考えられた道路史分類の概要を参考までに紹介しておく。武部氏は、2種類の文献分類方式をつくられていたが、ここでは寄贈されるにときに示された分類を記す。
 大項目と小項目の二つに分け、大項目は12、各大項目のもとに小項目があり、小項目の数は大項目によって違っている。誌面の都合上、類推できる小項目は省き、わかりにくい小項目を大項目の後の( )内に示す。  道路史(時代別項目)、道路文化(思想、詩歌、評論1道路、評論2橋、随想、小説、紀行・日記)、道路技術(道路、橋・隧道、環境)、人物(伝記・自叙伝・オーラルヒストリー)、外国(国ないし地域別)、報告書(文化財発掘調査、歴史の道調査、その他道路・土木)、史料(記録)、関連分野(都市・交通・環境、その他土木)、地図・絵図(絵図、地図、古代路線図)、論文集(古代交通研究、中世の道、土木史論文集、国際交通安全学会)、武部著作関係(著書、論文等)、大分類なしの小項目で、事典・辞典。
 武部健一氏の経歴などは、以下の文献に詳しい。
 平成14~17年度科学研究費補助金[基盤研究(B)]研究成果報告書『土木史研究におけるオーラル・ヒストリー手法の活用とその意義―高速道路に焦点をあてて― 姉妹版 武部健一氏』(課題番号14350279)、研究代表者 伊東孝、2006(平成18)年3月(CST MUSEUM蔵)

(武部健一/伊東 孝)

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