日本大学理工学部科学技術史料センター
 

井上 孝文庫 資料紹介

 井上孝氏は、京都帝国大学工学部土木工学科、大学院特別研究生を終了後、建設省に入省、最終的には建設省建設事務次官となられている。退官後、自由民衆党から参議院選挙に立候補し当選。1992(平成4)年12月には国土庁長官となっている(国会議員は3期18年務められた)。
 建設省時代には多くの日大の卒業生とともに仕事をされたが、特筆すべきは1952(昭和27)年12月1日に日本大学国土総合開発研究所の研究員(嘱託)を委嘱されたことである。「国土総合開発研究所」は、1951(昭和26)年4月に日本大学本部の付置研究所として発足し、1973(昭和48)年5月に廃止された、委託研究として国土総合開発に関する調査研究活動を行った。
 井上文庫は、井上氏が収集・保管していた資料をご遺族からCST MUSEUMが寄贈をいただいたものである。
『辞令』
  日本大学 1952.12.1
辞令
 日本大学から井上氏あてに、昭和27年12月1日付で「國土總合開發研究所研究員を委嘱する」という辞令の原本。日本大学国土総合開発研究所は1951(昭和26)年から1973(昭和48)年まで、政府の後援を受けて日本大学本部に設置された、国土総合開発計画、地方総合開発計画に関する委託研究の研究調査を担った機関である。
『井上孝氏に聞く 日本の道路30年』(連載1~13)
  日刊自動車新聞 1979
井上孝氏に聞く 日本の道路30年 井上孝氏に聞く 日本の道路30年
 井上氏が建設省事務次官を退任した1979(昭和54)年7月17日直後の、9月1日から14日にかけて日刊自動車新聞に連載された13回の特集記事。建設省で道路行政一筋の31年間を振り返ってのインタビューがまとめられている。
 日本の戦後の道路は、ワトキンス調査団が報告書の冒頭で「外国に比べると日本には道路の予定地はあっても道路はない。工業国でこれだけ道路を無視した国は、世界中にないのではないか」と、記されたところから始まったが、井上氏いわく、ガソリン税を道路整備の財源としたことで、道路整備の水準を外国並みに加速させたこと、さらに、公害問題、住環境との整合、地域経済の活性、地下鉄との関係、トンネルの災害対策などにも触れ、日本の道路に関して幅広い内容が語られている。
『昭和の道路史』
  昭和の道路史研究会編著  全国加除法令出版 1990 (コピー資料)
 本書は4部構成となっており、それぞれの題目と執筆は、『昭和の道路法制史-道路法関係法制史』台 健(だい けん)氏、『昭和の道路法制史-有料道路関係法制史』加瀬正蔵氏、『昭和の道路政策史』山根孟氏、『昭和の道路技術史』杉山好信氏が担当している。執筆者の建設省における役職のみを抜き出すと台(だい)氏(都市局都市計画課長,道路局次長,計画局長)、加瀬氏(道路局路政課長,道路総務課長,都市局長)、山根氏(道路局企画課長,中国地方建設局長,道路局長)、杉山氏(道路局有料道路課長,大臣官房技術審議官,関東地方建設局長)とそれぞれが長く道路行政に携わってきた。
 これら執筆者が、60余年の昭和の道路史を記録にとどめ、平成の時代に伝えるよう要請されて編纂されたのが本書である。資料として道路整備上の施策、交通上の施策、行政組織の変遷を「昭和の道路関係史」として、また広範にわたる法体系を分類して「昭和の道路法制史」として年表にまとめ、「道路関係統計資料」をも掲載することで、昭和時代の道路を網羅的に理解できる貴重な資料となっている。
『本州四国連絡橋公団三十年史』
  本州四国連絡橋公団  本州四国連絡橋史編さん委員会 2000
本州四国連絡橋公団三十年史 本州四国連絡橋公団三十年史
 本州四国連絡橋公団は1970(昭和45)年の創立以来、1979(昭和54)年に大三島橋の供用開始から始まり、1988(昭和63)年の瀬戸中央自動車道により児島・坂出ルートの全線供用開始、1998(平成10)年に明石海峡大橋を含む神戸淡路鳴門自動車道により神戸・鳴門ルートの全線供用開始、1999(平成11)年に西瀬戸自動車道により尾道・今治ルートの全線供用開始と順次本州と四国をつなぐルートを開通させ、本州四国連絡橋3ルートの完成を果たした。この29年間にわたる建設事業を振り返った記念誌となっている。
 カラーグラビアページに続き、第1編 本州四国連絡橋公団30年の歩み、第2編 ルートごとの足跡、第3編 公団事業の成果、課題および展望、さらに寄稿・遺稿、年表・資料が収められている。本州四国連絡橋と本州四国連絡橋公団の全てを網羅した貴重な資料である。
 なお、本州四国連絡橋公団は、2005(平成17)年9月30日に日本道路公団等民営化関係法施行法により解散し、その業務は日本高速道路保有・債務返済機構と本州四国連絡高速道路に引き継がれた。