日本大学理工学部科学技術史料センター
 

市川清志文庫 資料紹介

 市川清志博士は、日本大学工学部建築学科を卒業後、満州国龍江省開拓庁、国務院建築局建築行政処などで勤務し、終戦後は東京都建設局都市計画課の嘱託となり、1947(昭和22)年8月に日本大学工学部助教授として招聘され、1963(昭和38)年4月から教授、在職中の1986(昭和61)年9月に有楽町駅で骨折し入院され、同年11月18日に急逝された。
 約40年にわたり、日本大学理工学部建築学科で教鞭をとられ、その間、学内では大学紛争時の学生指導委員長を務められ、実社会では多くの都市計画調査、計画立案の基礎づくりに貢献された。
 市川文庫は建築学科都市計画研究室において、市川清志博士が集められ、学生の指導などに活用された国内外の都市計画に関連する書籍などを、研究室から寄贈されたものである。
『新都市の形態』
  S.E.サンダース, A.J.ラバック共著, 高山英華訳 技術資料刊行会 1950
新都市の形態 新都市の形態
 1946年に“New City Patterns”として米国で出版された本書は、土地利用の機能的な配置を計画的な見地から解説したもので、米国の都市で実現のための財政的、計画的な方法までを提案している。
 わが国では戦後の都市復興に資するようにと、翻訳のとりまとめを高山英華博士(東京帝国大学工学部建築学科1934年卒業)が、そのほか、市川清志博士(日本大学工学部建築学科1941年卒業)、日笠端博士(東京帝国大学工学部建築学科1943年卒業)入澤恒博士(東京帝国大学工学部建築学科1943年卒業)、村井敬二氏(東京大学第二工学部建築学科1945年卒業)、下河邊淳博士(東京大学第一工学部建築学科1947年卒業)が共訳者となって全文が訳出された。
『都市計画図集』
  日本都市計画学会編 技報堂出版 1978
都市計画図集 都市計画図集
 1978(昭和53)年に日本都市学会が編集して出版された、都市計画の研究や実務の参考となるような計画図が体系的にまとめられた図集となっている。A~Kの11項目にまとめて当時の最新情報が図面と解説が併記される形で示されている。A 都市計画史・都市史では年表と川越市を事例とした都市計画に関連する図面が、B 理想都市では古代からCIAMに至る誰もが都市計画の授業の中で学修する図面が多く掲載されている。K 都市計画事業では都市の行政の仕組みや都市計画事業の資金にまで触れている。今となっては単なる古い資料ではあるものの、その資料性は高い。
『建築物法規概説』
  笠原敏郎, 市川清志著 相模書房 1972
建築物法規概説 建築物法規概説
 1954(昭和29)年から1985(昭和60)年まで改訂・重版を繰り返した建築法規の教科書で、本学建築学科の卒業生は、分厚い本書で学修された方も多いと思われる。
 笠原敏郎博士は内務省で市街地建築物法(1919年)を起草した法規のスペシャリストで、市川清志博士も大学卒業後は満州国で、戦後は東京都で公務員として勤務しており、建築関係の法規には詳しかった。そのおふたりの共著による本書は建築法規について詳細に解説し、また、法令が改正されると直ちに反映されるなど、改訂も多かった。